イタリアの起業家ネットワーク―産業集積プロセスとしてのスピンオフの連鎖
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極めて緻密なフィールドサーヴェイに支えられた起業家論 |
本書で著者は、従来日本の産業研究者たちの産業集積研究が、起業家たちの存在を軽視していたことを白日の下にさらすことになった。イタリア・ボローニャの包装機械メーカーの集積をケースとしながら、著者の視点は日本の産業集積研究にこそ大きな示唆を与えるものである。研究者のみならず、産業振興行政の担当者らも、自らの担当する地域の政策立案に当たって、本書から多くのヒントを得るであろう。なぜなら、著者がその優れた観察眼によって、極めて具体的に包装機メーカーの技術者たちが数珠つながりに独立・起業したストーリーを掘り起こしているからである。ここまで起業家たち各個人の生態に迫った研究書は、ほとんど他に類を見ない。抽象的な理屈先行ではなく、実際の起業家たちの事業意欲や企!機会、持てる技能を独自製品開発に活かす経緯などをいきいきと描いた部分は、凡百の産業組織論と一線を画し、著者の誠実な調査・研究姿勢をも伺わせるに足る。また理論構築の面でも、著者の思考は水際立っている。著者が提唱する「スピン・オフ連鎖」の概念は、今後の産業集積研究にとって、決して無視できないものであろう。実際に、東京・城南地域の工業都市の産業行政担当者たちの一部が、本書を参考に新しいアプローチの構築を模索し始めている事実は、著者のフィールドサーヴェイの背景に社会学・地域論・都市論のフレームがあり、さらに深層には産業を支える地域社会、コミュニティーを考察することへの興味があることを反映している。集積研究、中小企業研究、また多品種変量時代の製造業研究、産業社!会学、イタリア社会論、起業家論、少なくともこれらの分野の研究者・行政担当者にとっての必読の書。

