アントレプレナーマネジメント・ブック―MBAで教える成長の戦略的マネジメント
![]() |
No Pain,No Gain.ベンチャーは成長しながら痛みと戦っていく |
ベンチャー企業経営を扱ったものと言えば、大きく3つに大別されると思う。ビジネスプラン関係、起業家のリーダーシップ面やエンスージアズムに焦点を当てたもの、そして、財務管理やマーケティングなど経営機能の各論に焦点を当てたものである。同著は、この従来の類書の3分類のいずれにも属さない。同著の存在意義は、大きく以下の3つに集約され、UCLA-MBA教授としての著者の豊富な経験と知見から得られた理論とケーススタディによって、学習効果を上げている。
・企業成長を如何にマネジメントするかの視点を提供する
・成長・ベンチャー企業の組織論・HRMの視点を提供する
・大局観・戦略を提供し、ベンチャー企業が俗人的にならないよう警鐘を与える
まず、第一の焦点である「成長を如何にマネジメントするか」については、企業のライフサイクル、成長ステージに応じて「如何に企業成長からもたらされるリスクを回避し成長機会に換えていくか」に焦点を当てており、同著の英題が“GrowingPains”であることからも明らかだ。実際、市場機会を巧く捉え競争優位性を確立しながらも、膨張する需要の圧力に屈し敗退する企業は多いであろう。従来から業況不振企業の再建と急成長企業ほどマネジメントが難しい局面はないと言われるが、一方で成長リスクのマネジメントを説いた書籍は少ない。この点で同著の存在意義は大きい。
第二の組織論・HRMの観点については、とかく成功する成長・ベンチャー企業は経営者の手腕・リーダーシップや、マーケティング手法や製品の新奇性ばかりに焦点が当てられがちである。勿論、これらは大切であるが、成長する企業が増大する顧客群に製品・サービスを適切に届け続けるためには、適切な組織がなければ成り立ち得ない。この点で、同著は、成長ステージと組織開発ピラミッドという二つの視点から、ベンチャー企業をシステマティックに捉える視点を提供してくれる。
最後の点については、アントレプレナーである限り、経営者はとかく企業が可愛い我が子になり手放せなくなりがちであろう。しかし、アントレプレナーは自らの想いを世に問う手段として起業を選んだのであるから、企業が成長し社会化していくプロセスの中で、手を引かざるを得ない局面も出てこよう。同著は、豊富なケーススタディを通じて、企業成長を客観的に見極め、俗人化させない視点をも与えてくれる。監訳者の加藤氏は、雑誌対談等の場で「インテグリティ(高潔さ)」という言葉をよく話される。加藤氏が同著を選んだ理由には、そんな想いもあるのではなかろうか。
同著には、ビジネスプランや経営機能の各論に関する詳細な指南はない(この点については『ベンチャー創造の理論と戦略』(ダイヤモンド社)をお勧めしたい)。しかし、同著が与えてくれる大局観は、自らの想いを世で具現化したいと願う起業家にとって非常に示唆に富むものであると考える。また、多くの閉塞した大企業に身を置くビジネスマンにも、ビジネスとはそもそも何であったのか、を再確認させてくれる良著であると思う。
![]() |
驚愕の書 |
私はベンチャービジネスを立ち上げて6年になりますが、まさにこの本に記された「痛み」を経験してきました。今後も成長に従いその都度その都度この本のとおりのことが起こるのだろうなと思います。そのときこの本は大きなささえになるでしょう。事例はアメリカにおける起業ですが、問題事例は普遍的なテーマです。体系的な章立てですが、最後まで一気に読み終えました。プロフェッショナル組織を作るためのノウハウをここまで詳細に記述された本に今まで出会ったことがありません。
値段は高いですが、それだけの価値はあります!

